HAZY MOON
「ありがとう……。お父さんとお母さんの分まで、何度だって言うっ。わたしたちを守ってくれてありがとう」


ありったけのありがとうを梶先生にぶつけた。

ずっと強張った顔だった梶先生が、ぐっと目を閉じ、


「……雫希っ」


力強くわたしを抱き寄せた。
やっぱり梶先生は、ハルだ。
腕の温もりは、十二年前と全然変わっていない。
涙で濡れた頬を、胸に押し当てた。


「なぁ、雫希」


「なに?」


梶先生がわたしの髪を撫でながら、名前を呼ぶ。


「雅晴との約束は継続する」



頭の上から降ってきた声に、わたしは視線を向ける。


「夕希は無理だったけど、雫希は守るよ。雅晴の代わりに」

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