黒の村娘といにしえの赤鬼
「ただいま」

家に着いても誰もいない。
明るく出迎えてくれたあの子はもういないんだ。
鬼仙草のことが知られなかったら今頃ここにいてくれたはずなのに…。

でもそうしたら私は死んでいた。

珠々を一人にする訳にはいかなかったから仕方ないことだった。

早かれ遅かれこうなる運命だった。

こんなに未練が残るなら始めから連れてこなければよかったな。


「さて、夕食をとろうか」


そう思い、立ち上がった時だった。


「千之介、いるか!」


もう夜だというのに誰だと思ったら声で分かった。
これは私の幼なじみだ。


「どうしたんだい秋彦、こんな時間に」


走ってきたのか息を切らせて何やら焦っている様子で立っていた。


「こ、こんばんは…」

秋彦の横からひょこっと顔を出したのは小夜ちゃんだった。


二人して一体何の用だろう。
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