黒の村娘といにしえの赤鬼
…裏山か。

…そうか!

まさか珠々は…!


私は今まで重要なことを忘れていたようだ。

珠々は何の用もなしに裏山へ足を運ぶわけがない。

最近行った時は…
そう、鬼仙草を採りに行った時。

珠々はもしやあの存在に気づいてしまったという事か?

だとしたら今頃無事でいてくれるのかもしれない。

確かめようがないが、そうだと信じるべきか…。信じるしかないか…。

そうなれば、これ以上いくら珠々を探したって見つかるはずがない。

私は歩く足を止め、山を見上げた。



「こんなに急に別れが来るとはね…」



これでよかったんだ。

本来ここにいるべき子ではないのだから…。


「さて、村の皆にはなんて言い訳をしようか」


そう考えながら家へと足を向ける。
何だか急に胸にぽっかりと穴の空いたような気分だ。
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