柊くんはやっぱり意地悪だ
家の門を開けるとこれでもかってくらいの晴天だった。

会えるかな…?
私は隣の家の玄関を横目に通り過ぎようとしたその時だった。

ガチャ。

「…あ!…えっと…柊くんおはよう!」

「…おう」

彼の名前は柊 葵衣(ひいらぎ あおい)
幼稚園からの幼馴染みだった。

「何してんの、学校遅刻するけど?」

いけない、私ったら柊くんに見とれて
すっかり時間のことを忘れてしまっていた。

「そうだった!!!やばい!」

柊くんは自転車をスーッと出してこう言った。

「…後ろ、乗れば?」

「え?」

「遅刻してもいいなら乗せない」

「…!!!乗る!乗ります!ていうか乗せてください!」

まさかそんなこと言われると思ってなくて
心臓が飛び出る程嬉しかった。

早速柊くんが漕ぐ自転車の後ろに乗り込んだ。

「あのさ、捕まってないとお前落ちるけど」

「ご、ごめん!…でも捕まるとこ…」

ぐいっと柊くんはなんでもない顔して
私の手を自分の腰に寄せた。

待って待って、待ってってば!!!
こんなの反則だよ!
意識しすぎて顔が熱くなった。

「行くぞ」

「う、うん!」



柊くんは私の初恋で今でもずっと好きな人だった。
中学生に上がってすぐの頃私がアメリカへ留学する時
真っ先に柊くんは言ってくれたんだ。


「…杏、留学するんだろ?アメリカに」

「うん…先生が私の成績なら留学を進めるって
お母さんやお父さんも結構喜んでて…」

「待っててやるよ、杏が帰ってくるまで」

「ありがとう…わたし頑張ってくるね」

それはそれはもう嬉しくて
3年間の留学も苦じゃなくて頑張ることが出来た。


風の心地よさと柊くんの体温を感じながら
そうこうしているうちに高校へと着いた。
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