午前0時のシンデレラ
第1章 「シンデレラとの出会いは、社内の階段で…」

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「……この摩天楼も、いい加減見飽きたな」

自社の高層30階から眺める、社長室からの景色も最初こそ下界を制覇したようにも感じられたが、最近はあまり面白味のないものにも思えてきていた。

「……つまらない。仕事も、軌道に乗ってしまえば、始めたばかりの頃の、あのピリピリとするような緊張感もないし……」

見下ろす暮れ始めた夕景に、ため息が漏れる。

「くだらない」

吐き捨てるように独り言を呟いたところへ、

「一条社長、今日はこれから経営コンサルタントの方と会食の予定ですので、そろそろ御支度をお願いします」

ノックの音とともに秘書が入ってきて、そう告げた。


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