七月八日のながれぼし




あたしはずっと、織姫と彦星が羨ましかった。

年に1度でも愛しい人に会える空の上の住人が、あたしにはもう2度と叶わない願いを叶えていることが妬ましくて苦しかった。



だけど違ったんだ。

あたしは失っていなかった。

遠い星の向こうに落ちたと思っていた流れ星は、本当は、あたしのそばにコトンと落ちていた。



空に流れる一筋の光。

大切な彼。大好きな彼。

あたしはやっと、あなたを見つけた。



「来年はあたし、ここに来ないから。受験生になるから、前からずっとそのつもりだった」

「……うん、わかっていたよ」



ああ、だから君の告白は今年だったんだ。

気づいていなかった理由に、あたしはなにもかも君に知られていたんだなぁと実感する。



「だから再来年、大学生になって、きっと会いに来て」



ふっと小さく息をもらして、彼に手を伸ばす。

昨日と違って今度は、そっと頰を包みこんだ。



「あたしは君を────光流を待っている」



彼は、くしゃりと泣きそうに笑った。



『もしも大人になったら。今度は迎えに行くのは俺だ』



そう言ったあんたはもういない。

あの日のあいつにはもう会えないけど、でもちゃんと光流はいる。



あたしの大好きな人は触れられない星ではないから。

あたしのそばで輝いているんだ。



星が空を流れ行く。

織姫の涙のように、彦星の誓いのように。



約束は、きっと果たされる。



               fin.







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