運命
「さすがに社長が会社を長期間は
空けられないみたいだ…」

「いい、仕事はここでするから持ってこい」

「分かったなんかあったら連絡して」

「あぁ、想嬉が起きる前に行け」

「はいはい…そういやもうバレてるぞ」

「チッ、めんどくせぇな」

「まぁ、俺から伝えとく、じゃあねー」

(声が…する?)
誰?社長?

「……想嬉」

私を愛おしそうに呼ぶのは誰?

「なぁ…もう泣くな…」

泣くな…そういうあなたのほうが
泣きそう…
守ってあげたくて
私は自然と目を開いて
泣くなと言ってくれたひとの頬に
手を当てていた…

おかしいね?死にたいほど
苦しいのに守ってあげたいと思うなんて


「っ!………?想嬉?」

「――――――!」

声をかけてあげたいのに…
そっか…声出ないんだった…

「待ってろ?今書くもの持ってきてやる」

書くものを取りに行こうとする…
やだ、離れないで、一人にしないで
気づけば手を掴んでいた…
男の人は苦手なのにこの人は安心する

「想嬉…?どした?」

フルフル―――

「………大丈夫だ、すぐ戻る」

やだ、
行かないで

ポンポン―――
頭を撫でられる

「明日にするか…想嬉
今日はもう休むぞ?
お前が起きるまでそばに居るから
安心して寝ろ?」

そばに居る…その言葉を聞いた私は
身体が現実を受け止めきれず
疲れていたのか不思議と眠気がおこり
男の人に縋るようにしがみつきながら
眠りに入っていった…
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