人間発注書
「お前!」


黒スーツの男もようやく俺の顔を思い出したようで拳銃を握り直した。


捕まえようとすれば、いつでも捕まえることができる距離だ。


それでも、俺は真っ直ぐに村山を見ていた。


「お前はなにが目的だ?」


「俺の当初の目的は瑠菜を助けることでした」


そう言うと、ソファに座っていた瑠菜がビクリと体を跳ねさせた。


「『人間発注書』に瑠菜が載る事なんてありえない。そう思ってた」


「けれど売られてしまった。だから助けにきたのか?」


「その通りです」


俺は村山の言葉に大きく頷いた。


「だけど、今は違います」


俺は倒れている高原先生に視線を向けた。


村山がほしかった女は、この人1人だけだったんだ。


「高原先生をここに置いて行きます。その代わり、ここにいる全員を解放してください」


俺は村山へ向けてそう交渉したのだった……。

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