晴れのち曇り ときどき溺愛
「あーよかった。断られるかと思った。昨日初めて会ったばかりの女の子を誘うのは結構なヒヤヒヤもんだった。見城さんは『きちんと迷子にならないように連れて来い』って言うし、下坂さんは『先輩だろ』っていうし、井上さんはどっかにいってしまうし」


「気を使ってくれたんですか?」


「先輩たちに言われたのもあるけど、単純にコーヒー飲みたいなって思っただけ。今日、俺、かなり仕事頑張ったし。可愛い女の子とコーヒー飲んでもいいと思う」


 年上とは思えない無邪気な笑顔を向けられると、私もつい笑ってしまった。可愛いというのは聞き流した。


 斉藤さんの送ってくれた歓迎会の場所のメールには地図も添付されてあったし、その店は行ったことないけど、近くの店はあるので、迷子になることはないだろう。それでも迷子にならないようにと斉藤さんは誘ってくれていた。


「歓迎会の店の近くに美味しい店があります。そこに行きませんか?」

「本当?」

「美味しいですよ。コーヒーは好みがあるので斉藤さんの口に合うのか分かりませんが、私は結構好きです。手作りのフルーツタルトも美味しいですよ」


「俺はそのフルーツタルトも食べるかも」

「え?」

「甘いものは別腹だよ」
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