晴れのち曇り ときどき溺愛
「入ってくる人って女の子なんだ。梨佳ちゃんよりも二つ年下の子。今までは秘書課で取締役の秘書だったけど、本人の希望で秘書課から営業課に来ることになった。進藤絵里菜って名前で、進藤商事の専務の妹。この会社の大株主の一人娘なんだ」


「詳しいのね」

「この課に居る人はみんな知っているよ。だって、進藤絵里菜は室長の幼馴染で、婚約者だから」


 室長は仕事も出来るし優しいから、彼女がいたとしてもそれは納得できる。でも、まさか幼馴染の婚約者まで居るとは思わなかった。それに進藤商事の専務って言えば下坂さんにお見合いの身代わりを頼んだ張本人で、その人は自分の親友だと言っていた。親友の妹が婚約者だなんて…。思ってもみないことだった。


「そうなの?」

「秘書課の高嶺の花と言われたくらいの綺麗な人だよ。まあ、室長もかなりのイケメンだし、お似合いというかなんというか。室長も御曹司だしね」

「御曹司なの?」


「あれ、梨佳ちゃんは何も聞いたことないの?室長の父親はこの会社の親会社の代表取締役で室長はいずれ、その親会社に戻ることになっているって。まあ、俺もそれ以上は分からないけど、今の室長あってのシステム課だから、親会社に行かれたら本気で困るんだけどね」


 初めて会った時からスマートな身のこなしはするし、身に着けているものも洗練されたものが多いと思ったことはある。育ちはいいような気がしてはいたけど、まさか親会社の御曹司とは思いもしなかった。
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