晴れのち曇り ときどき溺愛
 生まれや育ちは関係ないと思うこともある。住む世界が違うなら、気になっているとか、好きかもしれないくらいの思いなら諦めた方がいい。もしも斉藤さんが言っていることが本当なら、下坂さんは気軽に恋を出来る人ではない。

 でも、私は恋をしてしまっている。


 幼馴染の婚約者がいる人に恋なんか出来ないのに下坂さんを好きだと思った気持ちは嘘じゃなかった。


 住む世界が違う人を思い続けるのはどうなのだろう。

 
 私は恋もしたいし、出来れば好きな人と結婚もしたい。下坂さんを好きだといえ、ずっと婚約者の居る人を思い続けることが出来るだろうか?もう引き返せないほどの深みに嵌っているのだろうか?そんなことを思いながら自分の手元を見ると横から斉藤さんが私の顔を覗き込んできた。


「そんなに心配しなくても大丈夫。室長は俺たちを見捨てて自分だけ親会社に戻ったりはしないから」


 私の顔は自分でも意識はしてなかったけど、もしかしたら曇って見えたのかもしれない。斉藤さんは私が下坂さんが親会社にいずれは戻るかもしれないということを心配したと思っているかもしれないけど、そうではない。私が思ったのはなんとも言葉にしようがないものだった。
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