晴れのち曇り ときどき溺愛
 その後、システム課に秘書課から進藤絵里菜さんが配属されてきた。斉藤さんが言っていたのは間違いなかったと思うほどの綺麗な人で一目で育ちの良さが分かる女の人だった。

「進藤絵里菜です。この度、秘書課からこちらのシステム課に配属になりました。分からないことばかりですので教えて下されば嬉しいです」


 秘書課で働いていたというだけあって、妙に洗練されているように見える。私が着たら就職活動中の大学生にしか見えないような紺のシンプルなスーツ姿なのに、その場に花を咲かせたかのように華やかにした。


 下坂さんは進藤さんを見てもごく普通に接していて、私がこの課に入ってきた時と殆ど変らない。でも、進藤さんの方は下坂さんと視線が合うと、嬉しくて仕方ないというような微笑みを浮かべている。幼馴染で婚約者というのは見るだけで分かる雰囲気が二人の間に流れていた。


「進藤さんの指導は井上さんにお願いして、諸住さんは申し訳ないけど、席は見城の横に移って貰いたい。今月から諸住さんは見城と一緒に得意先を回ってください」


 下坂さんと井上さんの間に合った私の席は進藤さんが座ることになり、私はというと見城さんの横となると、この営業室のドアの近く…。つまりは下坂さんから一番遠い席になる。井上さんの指導を受けるとなると、今の私の席は進藤さんがいいと思うし、これから一緒に動くなら見城さんの横が仕事はしやすいだろう。


 合理的な配置だと思う。

 
 でも、悲しかった。

 
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