晴れのち曇り ときどき溺愛
 窓際に並んだソファに座ると足の辺りが軽くなる。

 ヒールに体重が掛かっていたから仕方ないけど、それでもまだ始まって間もないのに疲れたと思ってしまった。慣れない靴だけでなく慣れない服に慣れない環境。私はこんなにも緊張している。


「飲み物を貰ってくる。シャンパンでいい?」

「はい」


 ニッコリと笑ってから歩いて行く下坂さんの後姿の洗練さを見ながら『この世界に住む人』だと思った。身分違いだとは思っていた。でも、後ろ姿にそれを一番感じた。そんな人に私は恋をしてしまった。


「はい。これ」

「ありがとうございます」


 一分もしないうちにシャンパンを両手に下坂さんは戻ってきた。

「とりあえず乾杯しようか」

「はい」

「じゃ、乾杯」


 乾杯をしてからシャンパンを口に含むと細かな泡が喉を刺激する。すると少しだけ落ち着いてきた。


 シャンパンの泡の刺激だけでなく、アルコールのせいか緊張が解れてきている。そして、周りが見えてきた。セレブだけしかいないと思っていたホテルのホールには明らかにこの場を仕事と割り切って仕事をしている人もいる。私もそう徹すればいいだけ…。仕事の一環というのを忘れそうになっていた。


「少しは落ち着いた?」

「雰囲気に飲まれてしまって、帰りたくなりましたが、これも大事な仕事ですので頑張ります」

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