晴れのち曇り ときどき溺愛
 下坂さんの話はあまりにも唐突だった。一緒に働いているから後から知るよりは先に知った方がいいのかもしれないけど…。二週間の間に進めておいたプロジェクトのことも相談に乗って欲しかったけど、そんなのは全部頭の中から飛んでしまった。

「そうなんですね。辞めたら親会社の方に移動ですか?」

「それもまだ分からない。俺のこれからは父がどう考えるかによって変わる。移動になった場合は見城が引き継ぐことになると思うが今の時点では何も決まってない」

 それから私の持ってきた資料を一緒に見て、斉藤さんが言っていた以上に私も赤線を引かれた。説明をしながら赤線を引く下坂さんを見て、胸の奥が痛くて堪らなかった。こんなに近くにいるのに手が届かない人だと思い知る。

「今回のプロジェクトの進捗状況は順調だね。いくつか線を引いたけど、それ以外は良く出来ていると思う。頑張ったな」

「ありがとうございます」

 私が面談は最後だったので下坂さんと一緒に応接室を出ると、営業室には誰も居なかった。時間を見ればかなりの時間が経っている。みんな客先に行ったのだろう。

「少し早いけど一緒に昼ご飯でもどうだ?」

 時間を見ればこれから仕事に入るよりは先に食事をしてから仕事に入った方がいいのは分かるけど、一緒となると躊躇してしまう。でも、断れなかった。

「はい」
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