晴れのち曇り ときどき溺愛
 真っ直ぐな下坂さんの言葉に胸の奥が熱くなると同時に悲しくもあった。好きという気持ちだけで乗り越えられないものがある。それは下坂さんがこれから背負うかもしれないものだった。

 桂川家のことを私は少し調べてみた。でも、調べると言っても携帯で検索するだけで詳しいことがいくらでも出てくる家柄だった。由緒正しいというのは勿論のこと、経済界、政界、財界などに強力なパイプを持っている巨大なグループ企業だった。

 そこを担う可能性のある人の傍には支えられる人でないといけない。

「絵里菜さんはどうされるんですか?幼馴染で婚約者と聞いてます」

「それは否定しない。絵里菜は一族が決めた婚約者というか候補の一人ではある。でも、俺はそんな決められた結婚なんかしたくないと思っている。それに絵里菜も俺のことを恋愛対象としては見てないし、絵里菜も好きな男と結婚したいだろう」

 下坂さんはそう思っているかもしれないけど、絵里菜さんの気持ちはどうなるのだろう。絵里菜さんは一緒にいると好きになるみたいなことを言っていたし、秘書課からシステム課に移動してきて下坂さんの傍に居ることで改めて良さを感じたのだろう。

「私、今の下坂さんの言葉を聞かなかったことにします」

 琉生は自分の気持ちに素直になれと言ったけど、そんなことが出来るほど私は強くなかった。
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