魅惑への助走
***


 「明美ちゃんって、AV女優に向いてるんじゃない?」


 何度目かに体を許した時のことだった。


 編集担当の男が不意に、私にそんなことを告げた。


 「変なこと言わないでください」


 ふざけてから飼われているのだと思い、苦笑しつつ背を向けた。


 「真面目な意見だよ。美人だし、いい体してるし……。エッチも上手いし」


 「きゃっ」


 急に背後から脇腹に手が伸びてきて、つい甘い声を出してしまった。


 「それにほら……。感じやすいし」


 「やめてください……」


 我慢しているのに。


 こんな男に容易く反応してしまう、自分が悔しい。


 「誰にでもこうやって濡れるのなら、AV女優としても成功するよ」


 「いやです、私。AVなんか」


 ありえないと思っていた。
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