魅惑への助走
 「明美の体は、ほんと温かい」


 全て脱ぎ捨て、肌と肌が直に触れ合えば。


 互いの熱が混ざり合い、鼓動すらも共鳴し合う。


 真夏とはいえエアコンの風で室内は少し涼しいため、こうして抱き合っていると心地よい。


 こうしているだけでも十分に満たされるのに、さらなる高みを求めるのは、私が欲張りだから?


 「俺も同じだよ」


 どんなに温もりを分かち合っても、まだまだ欲しくなる気持ちを抑えられなくてもどかしいと告げると。


 上杉くんも同意した。


 「一緒にいるだけじゃもう物足りなくて。おかしくなりそう」


 耳元でそう囁かれるだけで、気を失いそうなほどの快感がこの身を貫く。


 だけど……まだ欲しい。


 女の扱いに慣れておらず、次の手順に踏み出すのをためらっている上杉くんをリードするのは、今日も私。
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