魅惑への助走
 「でももう、付き合ってるも同然なんだし」


 「今の状態なら、私たちただの体の関係オンリーだよ。そして別れる時も曖昧になりそうで、そんなの嫌」


 「分かった……」


 寂しそうに伝えた私に対し、上杉くんは恥ずかしそうに俯いてから、


 「付き合って……ください」


 聞き取り困難なくらい、小さな声で私に告げた。


 「聞こえません」


 「付き合ってください」


 少々ボリュームアップ。


 「どうして私と付き合いたいの?」


 「それは……」


 いきなりの質問に、口ごもる。


 「体だけ?」


 「違う!」


 それははっきりと否定した。


 「ならどうして?」


 「明美が……好きだから」


 「本当に?」


 「好きで好きでたまらない」


 「嬉しい……!」


 ここでようやく、離していた体を上杉くんに重ねた。


 「じゃその言葉に偽りがないことを、証明してみて」


 すでに乱れているものの、残された衣服を全て脱ぎ去るように促した。
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