魅惑への助走
 営業活動に出向いて、外部の人に接するのは刺激の多いことではあるけれど。


 私が足を踏み入れたこの業界は、特に性的な面において、常識と非常識の境界線が、一般社会とは若干ずれているのは間違いない。


 仕事柄仕方のないこととはいえ、日々卑猥な言葉をかけられ続けると、気が滅入ってくる。


 松平社長が隙がないキャリアウーマンなので、その分私が下ネタの窓口となっているようで。


 一般社会ならばセクハラとして問題になりそうな言葉を、日々浴びせられたりもした。


 「笑ってスルーしなさい。ムキになったら相手の思う壺よ」


 社長は、困った時は自分を呼ぶようにとアドバイスしてくれたけど。


 営業の場で、子供が母親を呼ぶように、社長に助け舟を出し続けるわけにもいかず。


 彼氏との交際に関するあれこれを、今日もまた尋ねられ続ける。
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