魅惑への助走
 ブランドもの購入の他、カジノでも豪遊。


 損失を取り戻そうと躍起になり、泥沼にはまって大損。


 加えてクレジットカードの支払い。


 同行した友人たちは実家に泣き付くなどして何とか切り抜けたけれど、椿ちゃんはそれができなかった。


 「事情を説明して、ご両親から借りればよかったじゃないですか」


 「それができれば、こんなことにならなかったし」


 椿ちゃんは東京からそう遠くはない、関東圏出身だけど。


 そこは保守的な思考が根強く残った田舎で、椿ちゃんが東京の短大に進むことすら、両親には反対されたらしい。


 「高卒で、地元の農協で数年働いたら、見合い結婚しろって土地柄で」


 「今時そんなことあるんですね……」


 親が進学を認めてくれなかったので、椿ちゃんは奨学金をもらって短大を卒業。


 その奨学金の支払いも毎月あり、椿ちゃんは窮地に陥った。


 「親に相談したら貸してはくれるだろうけど。その代わりに仕事を辞めさせられ、地元に連れ戻され、見合い結婚させられるのは目に見えていたから」
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