魅惑への助走
 「でもイケメン男優だったら、女性視聴者は喜びますよね」


 そういえばさっき、榊原先輩もそんな話をしていたっけ。


 今撮影している作品は、女性市場を開拓する目的もあると。


 「今後もっと女性視聴者が増えて、イケメン男優ブームなんて訪れたら。男優さんもきっと専属契約を結び、単体男優として活躍する日が来るんじゃないかな」


 椿ちゃんがふと予言した。


 「ただし現状からすると、それはかなり険しい道のりだとは思うけど。実際松平さんたちは、それを狙っているらしいわね。自前でイケメン男優を育て、専属化させたいって」


 「専属化……」


 「単体として男優が活躍するには、相当のカリスマ性も必要になると思う。ルックスレベルやカラミの上手さテクニックのみならず、世の女性たちをうっとりさせるような、圧倒的な存在感」


 「そんなスター男優さん、いますかね」


 思わず笑ってしまった。


 超の付くようなカリスマ性を持った芸能人じゃなければ受けられないような喝采を、浴びることができるAV男優なんてあり得るのだろうか。
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