スリーアウトになる前に。
忙しそうな中、ささっと声をかけに来てくれた。

「亜由美さん、二次会行けますよね? 俺ちょっと今動けないんで、後で」

それだけ言ってまた戻っていく。今さらどうこうってことはなくても、やっぱり懐かしいと思ってくれたかな。

甥っ子くんのビデオメッセージやバイオリンの生演奏がありなかなか素敵な会で、リサが言うには「2人の会社の人が企画して全部やってくれすてるんだって」と言うことだ。沢田くんは中心となって動いているらしかった。

二次会でも、さっきの武田くんは私達のところに来て話したりしていったけれど、沢田くんは見当たらない。

遅れてきたと思ったら、早速「お疲れ様です!」と囲まれて飲まされているようだった。確かお酒も強くはないし、酔ってるよね。

「亜由美? 疲れちゃった? 元気ないね?」

とリサに気を遣われて、向こうを気にするのをやめて慌てて会話に集中した。




お開き前になると、慌てたように沢田くんが早口で声をかけにきてくれた。

「楽しんでます? 誘っといてすいません。絡まれたりしてないですか? これ終わったらまだ時間平気? 」

終電なくなるかもとか思いつつ、うん、と答えていた。

大人になっちゃったんだなと思ったけど、こういう態度は相変わらずの沢田くんみたいだ。私を見つけると近寄って話しかけて来ては笑わせてくれる。そんな感じだったなぁ、あの頃。


終わってからリサたちとは何気なく別れて、待ち合わせて2人で飲みに行った。

相変わらず私を年上のいい女扱いしてくれることにいい気分になってたし、何かあるかもと少し期待してなかったわけでもない。

「びっくりしたよ、大人になっちゃって」

「かっこよくなったとか言ってくださいよ」

「なってる、なってる」

と軽口を叩き合い、とにかく久しぶりで楽しくて、昔みたいにいつまでも話しながら2人でかなり飲んだとは思う。

不覚にも、よく覚えてない。
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