公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~

洗濯室に入っていくと、白い木綿の頭巾で髪を覆ったメイドが三人、しゃがみ込んで働いていた。

木桶の中にはたくさんの洗濯物があり、彼女たちの手は石鹸で泡だらけだ。


「皆さん、おはよう。私も洗濯を手伝うわ」


そう言って腕まくりをした私に、メイドたちは揃ってギョッとした顔をして、四十代と思われる一番年長のメイドが、慌てて私を止めた。


「クレアさんに、御端仕事をさせるわけにはいかないですよ」

「私、ここに来る前は毎日、何十枚ものシーツや枕カバーをひとりで洗っていたのよ」

「え、そうなんですか!?
それでも、ここではお手伝いいただくわけには……。私どもがジェイル様に叱られてしまいますし……」


ジェイル様というのは、オルドリッジ公爵の名だ。

彼はジェイル・フランシス・セオドア・オルドリッジといい、屋敷内の者にはファーストネームで呼ばれている。

この屋敷に暮らすオルドリッジ家の人間は、今は彼ひとりだが、秋の収穫祭を終えると、都から遠く離れた領地の大邸宅で暮らす彼の家族もやって来るそうだ。

爵位を早々に息子に譲り、楽隠居生活を送っている彼の父親が『旦那様』と呼ばれているため、公爵となっても彼はファーストネームで呼ばれるという事情があるらしい。

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