手のひら王子様
螺旋階段に向けていた視線を、唖然とした顔で椿雪に向ければ……、



「ホントにそそっかしいったら無いんですよっ。あの人は……」



顔をしかめた椿雪さんが、深いため息と共に愚痴をこぼしていた。



かける言葉も見つからず、黙り込んだわたしに、



「椋様は、アナタに会いたくて焦って降りようとしたんですよ」


「えっ?」



「通学路の車から見えるアナタに会うのが椋様の楽しみでしたから」



こう言って、ずっとキレイな無表情だった椿雪さんが優しく微笑んだ。




じゃあ……、



椋太朗が言ってた、



ずっと見てたってのは、



ホントだったんだ……。



「あの日、椋様はアナタに声をかけるつもりだったんです」



なんだか……、



自分の気付かない間に惚れられてるなんて……、



……恥ずかしい。



真っ赤になった頬を両手で押さえて、



視線を椿雪さんに戻した。



「椋様の意識は、アナタを求めてさまよって……夜な夜な家中の人形に入り込んで脱走しようとしていました」



「…………」
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