魔王木村と勇者石川
「わーい、久しぶりの石川くんだ~。久しぶり~。えっと、今日は後輩もいないんだよね~」
あはは、と笑うと、返ってきたのはただひと言。
「知ってる」
そう言って、椅子に腰掛け、すぐに読書を始めてしまった。
けれど、そのひと言で全部わかる。
気遣ってくれたのだと。
だって、本来なら別に来る必要もなかったのだ。
本なら他でも読めたのに。
そして、水晶玉の向こうでも、蛍の驚きの声が聞こえていた。