同居人は国民的アイドル


「ありがとう。これからも応援よろしくね」




「は、………はいっ!!!」




ぎゅっと手を握り返すと、心底嬉しそうな顔して女は去っていった。




瞬間、俺の営業用スマイルが限界を迎えたのか徐々になくなっていくのがわかる。




さっきの笑顔とは真逆の無の表情で、俺はまた歩き始めた。




自分が腹黒いのも性格悪いのも自覚してる。




だから、アイドルやってるときはいい顔して黒い部分を隠してる。




母さんは自分のありのままの姿を出せって言うけど。




さっきの女に俺の黒い部分を見せたらどんな反応するかは目に見えてる。




今日から同居する朝倉里華ってやつも絶対幻滅してくはず。




どんなご時世だろうと、夢を壊すくらいなら同居しない方がよかったんだよ。




さっき母さんに言えなかったことを心の中で呟いて俺は歩き続けた。




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