無意確認生命体

さんざん着せ替え人形にされてようやく解放される。

帰宅したのは8時過ぎだった。

おじぃとおばぁは私が帰るまで夕ご飯を食べるのを待っていてくれたみたいだ。

先食べちゃっていいって電話したのにな。

ホント気使い屋なんだからなぁ、もう。

夕食を終え、居間で三人してテレビを見ていると、電話が鳴った。

廊下に出て電話をとる。


「はい。近江ですが」

『……あ、もしもし、榎本と申します……えと、夜分遅く、すいません……あの……し、雌舞希さんは、ご在宅でしょうか』

「え? あ、私、雌舞希だけど。榎本くん? どうしたの? あれ、てゆうか何でうちの番号――」

『あの……、連絡網で……』


電話の主はクラスメイトの榎本信二《えのもとしんじ》だった。


四月の初め。

私たち2年B組クラスメイト全員の連絡先が書かれたプリントが配られていた。

なにか学校から、またはクラス内で連絡事項があった場合、それを使って名簿順で伝えていくことになっていたのだ。


で、私の前がこの榎本くんという男の子だった。
< 19 / 196 >

この作品をシェア

pagetop