無意確認生命体

9.

「はい。これ飲みな」


美智は私にホットミルクを手渡してくれた。

「ちょっとは落ち着いた?」

「ん」

私は首を縦にふった。



ここは美智の部屋だ。

あの後美智は、わんわん泣くボロボロの私を自転車の後ろに乗せてここまで運んでくれた。

丁度部活の帰りだったそうだ。

美智は、例の「親睦会」の騒ぎには気付いていないらしく、私はほっとした。

あんなどうしようもなく下らない事に、美智を巻き込むのは避けたかったからだ。

美智は私を部屋に通すと、傷の手当てと、着替えまで用意してくれた。

……私は、その間ずっと黙り込んでただ泣いているだけだった。



「で、何があったの? 制服着て、あんなトコにいたってことは、学校行ってたんでしょ?」

「……」

「誰がやったの? 服も体も傷だらけ。体の方はアザもいっぱいあるじゃん! 誰にやられた! ほら、雌舞希! 答えなさい!」

「……私」

「はぁ!? あのねしぶちん? 自分でこんな傷、つけられるわけないでしょ! 嘘はこういう時につかないこと! はい! どこのどいつにやられたの?」

「……」

言えるわけない。

そんなこと、美智には一番知られたくない。


……その、私が自分で傷つけたって言うのは、嘘ではなかったし。
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