無意確認生命体

2年B組の前にはガタイの良い体育教師が立っていた。

担任の新井先生だ。

私は理由に察しがついていたが、美智は物珍しそうに何があったのか確認しようとしていた。

新井先生はなるべく教室の中を見せないようにしながら、

「今日は緊急で全校集会をすることになった。わかったらさっさと校庭へ出ろ!」

と、来る生徒一人一人に話していた。



全校集会が開かれた理由は当然、B組の教室内が荒らされていた件についてだ。

窓ガラスが割られ、校舎裏にはガラス片の刺さった椅子。

室内はいたるところ机が倒されていて、中に置かれっぱなしだった教科書はバーラバラのぐっちゃぐちゃ。


はてさてこれは外部からの侵入者によるものなのか、校内の者によるものなのか云々。

校舎裏の花壇で見つかった誰かさんの椅子は、現場の状況から見て内側からガラスを破って窓の外へ放り投げられたと思われる云々。


校長先生は要約すれば原稿用紙の半分ほどですむ内容の話を、無駄に肥大させて最近のニュースやらのどうでもいい話まで組み込みつつ、30分ほど話した後、

「もし、この中に犯人がいるのなら、ぜひ自主的に進言してもらいたい。何か些細なことでも、知っている人は伝えてほしい。先生はその生徒を責めないし、当然公表もしない。ただ、悩みがあるのであれば相談してほしい」

といって、話を切り上げた。

はん! あいつらが進言なんかするもんか。

多人数でひとりを襲うような下衆な奴らだってのに。

もう絶対にあんな奴らに隙は見せない。

いや、もはや全ての男に注意すべきだといえる。

二度と同じ枷は踏むもんか。

それにはまず、こんな事件はとっとと解決させてしまいたい。

私の失態の痕跡を、いつまでも残しておいたまま学校に通うのは、不気味で不快だ。

あいつらが進言なんかするはずがない。

ならば、次の休み時間に私が全て暴露しに行ってやる!

そんな黒々しい怒りを胸に、私は休み時間になるとすぐに職員室へ向かった。


進言なんてあるはずないと確信していた。

だからこそこの後、職員室で新井先生から聞かされた話に、私は呆然としたのだ。

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