海に降る恋 〜先生と私のｷｾｷ〜

それからというもの、私の一番好きな授業はパソコンと簿記になった。


教科自体が新鮮で面白く、相葉先生の授業は分かりやすかった。


先生は私が書き込んでいる解答が正しければ“うん、うん”と、優しい笑顔で見つめてくれて、

そんな時に先生と目が合うと、自然と私もニコニコと頬が緩んでいた。


相葉先生がちゃんと見ていてくれる事がとても嬉しかったから。


嬉しくて、嬉しくて、いつも胸がドキドキしていた。


真っ直ぐに向けられる先生の視線にも、その笑顔にも―…


先生の笑顔が嬉しくて、私は授業を真剣に聞いたし、

当然、自宅での勉強にも力が入っていた。


パソコンの授業の内容はワープロが中心。

だけど、まだまだパソコンが普及していない時代だった事も有り、

高価で買えないパソコンの代わりに、ワープロ専用機を両親にせがんで買ってもらった。



「先生、この位打てるようになったんだよー！」


私は時々、自宅で入力したものをプリントアウトしては、相葉先生に添削してもらっていた。


“ワープロを頑張っている”というのは建前で、

“相葉先生と話がしたい”というのが本当の理由だった。


そして相葉先生が大抵の休み時間や放課後はパソコン教室の準備室にいる事を知っていて通っていたのだった。


「おっ、すごいなぁ。河原はワープロも簿記も頑張ってるなぁ。」

「毎日練習してるもん。」

「頑張れ、頑張れ。」


そう言って、相葉先生の温かい手が私の頭に伸びるとポンポンっと撫でてくれて、

私はそれが嬉しくてどうしようもないのだった。