海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
琴美との間で気まずさを感じたこの日、私は瑞穂と梢に何があったのかを話した。


二人は私の行動に驚きながらも、


「さくらしい。」


そう言って、私を責める事なく受け止めてくれた。


私はそんな二人の様子に心の底からほっとしていた。


この状況で瑞穂と梢まで私から離れていったとしたら、私はきっと、最後まで高校生活を送れなかっただろう。


いくら好きな人がいても、こんなに沢山の人の中で一人ぼっちになるのは、やっぱり孤独すぎるから。


だからこそ、こうして受け止めてくれる存在がある事が、本当に嬉しかったんだ。



その後しばらくは琴美達3人と廊下ですれ違う度に気まずさを感じ、冷たい視線や何とも言えない空気が漂う事が辛かったけれど、


時間が解決してくれたのか、極力目を合わせないようにしている内に、不思議な程、意識しなくなっていた。


多分、お互いに。


“慣れ”っていうものは、本当に凄いと思う。



逆に悲しかったのは、時々琴美達と話していた瑞穂と梢が、時間が経つにつれて疎遠になっていった事だ。


『私が原因かもしれない…。』


そう思う度、本当に申し訳なく感じていた。



こうして壊れた友情は二度と元に戻る事がなく、

その後、琴美が一体いつまで相葉先生を追いかけ続けたのかも私は知らない。


もしかしたら、すぐに他の男の子に目を向けたのかもしれないし、

もしかしたら、高校を卒業しても思い続けたのかもしれない。


私には、恋以外の事も含めて、その後の琴美について知る事なんて出来なかったんだ。


知る事が出来なかったって言うよりは、それどころではないような事が起こり続けて、


“琴美の事ばかりを気にしている余裕が無くなった”


そう言った方が正しいかもしれない。
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