海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
プルルルル…

プルルルル…


「もしもし?」


予想よりも早く電話に出た相葉先生の声を聞いて、雨にあたって滅入った心がほっと温かくなっていくのを感じた。


「先生、河原です。」

「どうしたんだ?」


『さっき学校で話したばかりなのに電話をかけてくるなんて、やっぱり変だったかな』

そんな風に少しだけ後悔してしまったけれど、


「ちょっとだけ先生と話したいなーって思って。」


照れ隠しをするように笑いながら言うと、


「なんだそれ。」

そう言って、相葉先生もクスクスと笑った。


「先生、何してたの?」

「いや、特に何もしてなかったよ。」


受話器の向こうからは、ガサガサと紙がこすれる音が聞こえてくる。

それを聞きながら、


「じゃあ、ちょっとだけ話し相手になって?」


そうお願いすると、


「…ちょっとだけな。」


相葉先生は意地悪っぽく笑い、私は電話にもう一枚小銭を入れた。



「先生は普段、何をして過ごしているの?」

「んー…なんだろうな。テレビ見たり、本読んだりかな…?」

「どんなテレビが好きなの?」

「最近は野球とかかなぁ。」

「野球かぁ。うちの親は好きだけど、私は全然見ないなぁ。バラエティ番組ばっかり!」

「野球、面白いんだぞー。一緒に見てみたらいいのに。」


私が相葉先生に質問をしたり、なぜか途中で瑞穂の話になったり。

途中で小銭を一枚追加投入して、私達は他愛もない話を続けていた。

相葉先生は私がこんなに近くから電話をかけているなんて、きっと気付いていないだろう。
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