海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
相葉先生が目を瞑った途端、どんどん涙が込み上げてきて、


またしゃくりあげてしまいそうになるのを堪えながら、零れ落ちる涙の熱さを頬に感じた。



『もう、これが本当に最後。

相葉先生には会えないんだ…。

こうやって過ごすのも最後なんだ…。』


そんな想いで胸が一杯になっていく。



「…っ…」


私は泣き声が漏れないように口元に手をあてて、ゆっくりと相葉先生に近付き、


膝に乗せられた先生の両手を、そっと両手で握った。



その手の温かさに、


悲しくて、寂しくて、


今にも声を上げて泣いてしまいそうだった。


この温もりが欲しかった。


すごく欲しかったんだ。


これからずっと…。




「先生…いっぱい、いっぱい…どうもありがとう…。」


零れ落ちた涙が自分の手に落ち、それから相葉先生の手に伝っていった。



「河原…」


すぐに目を開けてしまいそうな様子の相葉先生に、



「まだだめ!お願い…!」


そう言って、目を開けないように先生を止めると、


呼吸を整えてもう一度、


「先生、どうもありがとう…。」


震える声で、そう言って少しだけ体を屈めた。


閉じた瞼の向こうで、ブラインドから漏れる光を感じながら。




私は泣きながら、相葉先生の唇にキスをした。



そのキスは本当に一瞬で、



タバコと涙の味がする



すごく、すごく、大好きな人との



苦しいほど切ない、ファーストキスだった―…
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