海に降る恋 〜先生と私のｷｾｷ〜

ドキドキしながら車を走らせ、１０分程で自動車学校に到着した。


駐車場に車を停めると、続々と教習用の車が戻ってきている様子で、


私は自分の車に乗ったまま、沢山の人と車の中にいるはずの青山先生の姿を探した。



時間が経つにつれ、他の生徒や仕事が終わった先生が次々と帰っていくのに、なぜか青山先生が見つからない。


自動車学校の敷地内からどんどん人気がなくなっていく内に、


「あれ…？」

と、私は不安になった。


時計を見ると、時間は約束していた２０時を、既に２０分程過ぎている。



『もしかして…青山先生、もう帰った？』


そう思い始めてから、私も帰ろうか…と迷っている内に、一台のマイクロバスが自動車学校の駐車場に入ってきた。


見ると運転しているのは青山先生で、


私が慌てて車から降りた時、マイクロバスを駐車し終えた青山先生も降りてきた。



「青山先生！」


こちらに近付いてきた青山先生に声をかけると、


「ごめん、すごい待ったよな？」


申し訳なさそうに青山先生は謝った。


「いえ、もしかしたら帰ったんじゃないかと思ってました。」


そう言って、私は笑った。


家を出るまで青山先生に会う事が不安でならなかったのに、


今、目の前にいる先生の姿が、不思議な程私をほっとさせている。



「ごめん！今日、生徒の送迎をする事になっちゃって…ほんとごめん！」


そう言って、もう一度私に向かって手を合わせた青山先生は、


「あれっ？もう一人は？」


不思議そうな表情を浮かべて、キョロキョロと辺りを見渡しながら訊ねてきた。



「あの…実は瑞穂の都合が急に悪くなっちゃって、ごめんなさい、今日は私だけなんです…。」


そう答えた私は、困ったような、申し訳ないような表情をしていたのではないだろうか。


事実、ついさっき私自身も急な展開に動揺していたのだから。