海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
「気持ちは分かるけど…。」


そう言って、瑞穂は言葉を詰まらせた。


諦めろとも頑張れとも言えず、返す言葉が見つからなかったのだろう。


そんな瑞穂の様子を察して、私は話を続けた。


「青山先生の事はこれ以上追いかけない事にする。バカかもしれないけれど、新しい人を探そうと思うの。」


「バカだとは思わないよ。だけど自分が傷つくような事はしないで。」


瑞穂の言葉は、相葉先生を諦める道を選択した私への気遣いと励ましだと感じた。


「分かったよ。本当にごめんね。瑞穂、どうもありがとう…。」


そう言って、私は瑞穂に頭を下げた。


瑞穂の応援を無駄にしてしまった事が、とってもとっても申し訳なくて、


瑞穂の温かい気持ちがとっても、とっても嬉しかった。



「そんなのいいよ、全然!」


そう言って、いつものような満面の笑みを浮かべて瑞穂が私の肩に手を置いた。


「ね、気晴らしにカラオケにでも行こうよ!このまま帰るのは勿体ないよ!」


「…そうだね、そうしよっか。」


私は瑞穂の笑顔につられて微笑むと、車のエンジンをかけた。


そして、車のライトが行き交う街の中へと走り出した―…




青山先生の事は好きになれなかった。


それでも、


“いつかきっと、違う人を好きになれる”


この希望だけは、変わらずに私の心の中にある。



それだけを信じて新しい恋を求め続けて、親しくなった人が何人かいた。


友達から紹介された男の子や、たまたま知り合った大学生。


仕事の関係で知り合った人…。


色んな人がいたけれど、それらは全て短期間で自然消滅になるような、出会いと別れの繰り返し。


その度に感じていたのは、やっぱり相葉先生の事…。


どんな時にどんな相手といても、私の心の中から相葉先生が消える事はなかった。


結局1年を過ぎても不思議な程鮮明に、相葉先生への想いは色褪せる事がなかった。
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