海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
「ただいまー。」


会社や仕事での疲労感を感じながらリビングのドアを開けると、


「お姉ちゃんお帰り。」


そう声をかけてきたのは、妹の芽衣だった。



芽衣は高校3年生。


私が通っていた高校と、同じ学校に通っている。


帰ってきたばかりだったのか、芽衣は制服を着たまま、ソファに座ってお菓子を食べていた。



「芽衣、着替えないの?なんでもすぐこぼすから、制服汚しちゃうんじゃない?」


そう言ってクスクス笑いながら、私はリビングとつながっている隣の部屋で部屋着に着替えた。


「大丈夫!私もすぐ着替えるもん。」


ジュースをごくごく飲んでいる芽衣に、


「あっそ。」


着替え終わった私はリビングに戻ると、芽衣がつまんでいたお菓子を一つ口に入れた。


口の中にお菓子の甘さが広がっていく。


疲れた体に染み渡っていくようだった。



「あ、お姉ちゃん知ってる!?」


すごく驚いた表情で私に聞いてきた芽衣に、


「ん?なぁに?」


笑顔で答えた私は芽衣の表情を見て、


『何かすごく驚くような、面白い事があったのかな。』


そんな風にわくわくしていた。




「あのね…。」


「うん?」



私がもう一つ、お菓子を口の中に放り込むと、



「相葉先生、結婚するんだって!大崎先生と!」


そう言った芽衣は、とっても嬉しそうに明るく笑った。



「え…?」


芽衣が言った事が理解出来ないまま、私の目の前が真っ暗になっていく。


目の前の景色が歪んだように思えたのは、眩暈を起こしそうになっていたからかもしれない。



『どういうこと?何言ってるの…?』


そう思えば思う程、心身の全機能が停止していくような感覚があったけれど、



「…えっ?本当に?」


そう言って、自分の心の変化を悟られないように驚きの表情を浮かべた。


私には、そうやって平静を保つのが精一杯だった。
< 289 / 446 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop