海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
その日は、よく晴れた日曜日。


目が覚めてカーテンを開けると、眩しい陽の光が部屋に差し込み、


『最後に青空が見れて良かった。』


私はそう思った。


清々しい気持ちになったのは、本当に久しぶりだったから。


最後にこんな気持ちになれた事を、とても嬉しく感じた。




「おはよう。」


リビングにいる父と母に声をかけると、


「おはよう。」


父は新聞に目を通しながら、母は台所からにこやかに私に声をかけた。


いつもの週末と、なんにも変わらない一日。



私の心はとても穏やかだった。



「今日は日曜日なのに、割と早く起きたんだね。」


そう言って、驚きながらニコニコしている母に、


「うん、ちょっと出かけようと思っていたから。」


私はボサボサになった髪を手で解きながらソファに座った。


私は大抵の休日を昼近くまで寝て過ごしていたので、母が驚くのも無理はなかった。


昨晩は、


『とうとう明日は相葉先生が結婚してしまうんだ。』


その思いが頭の中を駆け巡り、なかなか寝付く事が出来なかった。


そして、自分にとっては最後の日なのだとも思っていた。


そんな事を考えていたせいで、昨晩は殆ど眠れなかったのに、どういう訳だか今朝は9時頃自然と目が覚めた。


自分にとって特別な日は、いつもなら考えられないような出来事が起きるものなのかもしれない。



「パン食べる?」


母の言葉に、


「食べる。」


私はそう答えて食卓に移った。



「はい。」

「ありがとう。」


母が皿に乗せて渡してくれた、こんがりとトーストされたパンにバターを塗って頬張る。


いつもと同じなのに、何故かとっても美味しく感じた。


「なんか美味しい、このパン。」

「そぉ?いつもと同じだよ。」


そう言って笑う母を見て、自然と私も笑顔になる。



口にしたものを美味しいと感じ、母の笑顔を見て自分も笑う。


穏やかに過ぎていく時間に、私は安堵していた。
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