海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
「う…。」


空気も手もとても冷たいのに、目頭だけはとても熱く感じた。




『私は生きている』


雪の中に埋まった手に痛みを感じながら、自分が生きている事を実感し、涙で視界はどんどん歪んでいった。




『私は生きている―…』


相葉先生への想いは叶わなかったけれど、


私は沢山の人の優しさと愛情に支えられて、こうして生きているという事にようやく気付いた。


ここまで来ないとそんな事にも気付けなかった自分が情けなかった。




『死ねない。

死ぬのが怖い―…』


ここ数ヶ月の間で初めて、死のうとしていた事を恐ろしいと感じた。




光が差し込む海に、沢山の雪が吸い込まれていく―…


神々しく感じたこの景色を見た時、人の生き死には私が決めることではないと言われた気がした。


死ぬ勇気が有るなら、きっと今の苦しみも乗り越えられるはずだって、


どんなに辛くても乗り越える強さを身に着けなければならないんだって、


そんな風に、正気に戻れた気がした。



“死ぬという事は私自身が苦しみ、残された人も苦しむ”


自ら命を絶つと言う事は最もやってはいけない事だし、


自分で自分を殺す事も、沢山の優しい人達を裏切る事も私には出来ない。


そんな勇気を持ち合わせていくて当然なのだと思う。



どんなに辛くて苦しくても、生きて沢山の優しさに感謝するべきなのだから―…
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