海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
私はいつまで経っても帰って来ない大和を待つのはやめて、昼過ぎに一旦、自分の部屋に戻る事にした。


何度か大和に電話をした後、その日の夕方になってようやく連絡がついた。



「今どこ?今までどこに行ってたの?」

半泣きで電話をしてきた私に、


「…酔っ払って会社の先輩の家で寝てた。今は少し仕事をしに会社に来てる。」

そう、ぶっきらぼうに大和は言った。



「…ごめんね…。」

「もういいから。俺の方こそ、ごめん…。」


私の謝罪の言葉に、大和はそう言ったきり何も言わなかった。



「もうすぐ帰れそうなの?」

沈黙が怖くて自然と口から出た私の質問に、



「…もうしばらくかかりそう。」


そう、大和は答えてくれたけれど

結局、この日は会う事が出来なかった。



それは、


「少し冷静になりたい。」


大和がそう、言ったからだった。



冷静になって良くなる場合もある。


けれど、私達の場合はこの日を境に関係の修復が難しくなっていた。



会える日もあったけれど、

それでも、会話は日を追うごとにぎこちなくなっていった。



その証拠に、


私は何を話せばいいのか、

大和とどう接していくといいのか、

自分の仕事はどうすればいいのか―…


そんな疑問や不安ばかりに支配されてしまいそうだった。



苛立っている時の大和は暴力こそ振るわないものの、怒鳴る事はしばしばだった。


話をしていて笑ってくれる事もあったけれど、


それでもいつ、何が原因で不機嫌になるか分からない彼の様子に、私はずっと気が張っている状態で…


いつのまにか、まるで腫れ物にでも触るように大和に接していた。
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