Only Three Months
「…早く姫から離れなさい」


ため息をついて、自分のイスに座ってから国王が言った。

ここは先に、アリーの心配をするべきでは?
国王のせいで怪我をしかけたというのに。

そんなに、庶民とは距離を置きたいのか。


「離れなさいと言っているのが聞こえないのか」


聞こえていないわけがない。
この場所で国王の言葉に逆らうとか、オレにそこまでの勇気はない。

アリーが、オレから離れようとしないんだ。


「何をしている。
 アリシア、離れなさい」
「嫌よ」


アリーのはっきりした声は、ざわざわしていた貴族を黙らせるのに有効で。
王族であるアリーが、庶民のオレから離れない。


「離れなさい、アリシア」
「嫌です、お父様」
「離れなさいと言っている!」


厳しい声を聞いても、アリーはオレから離れない。
オレの腕の中から、国王を見ている。

オレと目を合わせて、また国王へ向き直る。


「…マイクはすべて知ってるの。
 お父様が何をしたのか、全部知ってるの!」
「何を言うんだ、アリシア」
「待って、アリシア、あなたお父様に何をされたの?」


アリーの無事を確かめるはずの舞踏会。
険悪ムードが広がってく。

国王は、オレが何を知っているのかまだ分かってないはず。
王妃は、オレが何を知っているのか聞きたがっているはず。
貴族たちは?

オレが知っていることは、こんな公で話すことじゃない。
アリーが庶民学を学んでいて、それで国王が怒ったところでまででオレの仕事は終わり。

王妃がアリーを見て、オレを見てくる。


「マイケル、あなた、アリシアが何をされたのか知っているのね?」
「はい」
「すべて話して。これは命令よ」
「待ちなさい」
「あなたが自分で話してくださるの?」


王妃の口調に、誰も反抗しなかった。
< 120 / 133 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop