Only Three Months
アリーの偽名、“アリス”はオレがつけた。
アリーって呼んでしまっても愛称で通る。

本名のアリシアに似てるといえば似てる。
でも、学校のみんなはオレが“姫”といるなんて思いもよらないはずだから。


「アリスはなんでマイクのとこに来ることになったの?」
「私、捨てられたの」
「ごめんなさい」
「大丈夫」


アリーが自分の中に作った、もうひとりの自分。
オレも、少し手伝って、矛盾のないように作った。

オレに両親がいないのを知らない人はいないから、
両親がいない者同士で一緒に住むことになった。
両親がいないって時点で、詳しく聞いてくる人はいないだろう。
もともと、オレに話しかけてくる人は少ないし。


「マイク、手続き?」
「ああ」
「オレ、先に教室行って、超可愛い転校生来るって言っとくね!」
「え!」
「またあとでね!」


エドが走って消えてく。
アリーが不安そうにオレを見上げる。


「…転校生って珍しいから、エドが言わなくても十分広まるよ」
「そう」


そもそも、エスカレーター式のこの学校に、転入できるってことを初めて知った。
年度の初めとか、きりのいい時でも入試のタイミングでしか入れないと思ってた。

職員室の周辺には、ほとんど誰もいない。
生徒はもうHR教室にいるはずの時間だから。

事務室のドアをノックして、中に入る。


「マイケル・リリーです。転入生を…」
「そこへ座って待ちなさい」
「はい」


事務員が、オレの担任を連れて戻ってきた。
手続きって、担任がするのか?


「アリス、よろしく」
「よろしくお願いします」
「何かあったら、マイクを頼るといい。
 転校生は珍しいから、みんな声をかけてくれるとは思うが」
「はい」


アリスがまた、不安そうにオレを見る。
頷くと、また担任の方に向き直った。

担任は、サーから聞いてオレたちの家の事情を知ってるはず。
それ以上なにも踏み込んでは来なかった。
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