Only Three Months
「オレ、アルバートの王位継承者だって」
「…本当に?」
「ああ」


びっくりしてステップがずれたアリーを、フォロー。
交流会のときもそうだった。


「私、頑張る。
 待ってるから」
「ん、無理はしないで」


アリーが笑った。
次にこの笑顔を見れるのがいつになるか分からないけど。
見れたことで、オレが安心したのは確かだ。

音楽が鳴りやんで、オレを睨んでる執事の元へアリーを帰す。
そんな見てこなくても、オレは何もしない。
むしろ、アリーに何かするのは執事や世話係や国王だろ?

台座から降りて、エドのところへ戻る。


「おかえり」
「ただいま」
「マイク、顔色よくなった」
「そう」


オレ、どれだけ思い詰めてたんだ?
エドにそんな風に言われるとは。


「…ありがとうございました。
 アリシア・バイオレット姫様のご退場です」


挨拶させない強硬手段。
アリーがまた王族にとって不利なことを言いだすかもしれないから。

見えなくなるまで会場にいたかった。
視線が痛くても、アリーをちゃんと見ていたかった。
次に会えるのが、いつになるか分からないから。


「…エド」
「うん」


教師からの指示で解散になって、出口が混む前にすり抜ける。
オレがここに来た理由は、アリーに会いに来ただけだから。

元の一人暮らしの家まで歩く。
昨日は直接アルバート城に行ったせいで、日記とかオレの物がないから。


「…アリーと何を話したの」
「別に」


黙って、歩く。


「…ねぇ、マイク」
「何」
「マイクと踊ってるときのアリー、すごく穏やかだったよ」
「ん」


アリーは明らかに強張った顔をしない。
“姫”として公務での表情には慣れてるから。

それでも、庶民として接した期間のアリーは、やっぱり自然体に近くて。
近くで見てたエドには、そう感じられたんだろう。
もちろん、オレもそうだと思う。
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