ぜんぶ抱きしめて。〜双子の月とキミ〜


『瑠奈にはヒミツにしろって言われてたけど、実はあんた、けっこうろくでもなさそうな二年生の男に目つけられてたんだよ。可愛いから付き合いたいって。朔経由で瑠奈に近づこうとしたの。でも、朔はハッキリキッパリ断って、おまけに釘刺してた。“お前みたいなやつには妹は任せられん。近づいたらボコボコにしてやる”って。お父さんみたいでしょ』


なにそれ、全然知らなかった。それ、一歩間違ったら自分が恨まれるじゃない。それなのに、私のことを思って……。


『もうぶっちゃけるけどさ、あんたの気持ちなんて私も朔もずっとお見通しだったんだよ。だからいつか想史くんと幸せになってほしいと思ってた。だから想史くんが別の女の子と付き合いだしたこと、なかなか言えなかった』

「どさくさまぎれにぶっちゃけたね……」

『うん、ごめん。でも本人だってバカじゃない。きっと気づいてたよ。ね?』


穂香が想史をにらむ顔が目に浮かぶ。想史の答えは聞こえなかった。


『それでも想史が好きなら、堂々と戦えばいい。無理なら、いい加減に忘れて他の男の子を見た方がいい』


そんな風に綺麗に割り切れないよ。


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