ぜんぶ抱きしめて。〜双子の月とキミ〜


『朔だってきっとそう思ってる。なあ瑠奈、早く帰ってこい。もしこのまま朔に会えなくなったら、絶対後悔するだろ……!』


最後の方は涙でかすれているような声だった。遠くの方から穂香がすすり泣きするような声も聞こえる。

夢の中で私がいなくて、一生懸命探してくれた朔。

お母さんのお腹にいるころから、ずっと一緒だった朔。

いつだってそばに朔がいるのが当たり前だった。だから、その温かさに気づけずにいた。

もし、朔が死んでしまったら、本当に会えなくなってしまう。会わないと会えないのは、全然違う。


「私……」


朔に会いたい。もう一度、朔に会って謝りたい。

私が悪かったよ。寂しかったなんてただの被害妄想だった。私に周りの気持ちを感じ取る余裕がなかっただけ。

周りが先に大人になっていってきらきら輝いて見えるから、自分があまりにも卑小な存在に思えていた。友達のSNSをのぞくたび、自分もキラキラ輝いてなきゃいけない。なのにできない。悔しい。悲しい。こんなにつまらない毎日を送っているのは私だけなのかもしれない。いつしかそんな風に追い詰められていた。


そんな劣等感や焦燥感に負けていただけなんだ。それを家族のせいにしてた。一番近くにいる朔に比べられるからいけないんだと。
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