独占欲全開で、御曹司に略奪溺愛されてます

心配そうな顔に私は思わず笑ってしまう。


「大丈夫だよ。あの時の傷はもうすっかり治ってます」

「そうかもしれないが……」


遼は歯切れ悪くそう言ったあと、何かの願掛けでもするかのように、私の手首に残っている傷跡に口づけをした。

遼が「俺は麻莉と結婚します」と宣言したのは、もう一ヶ月も前のことだ。

あの時負った傷が治りつつあるように、私を取り巻く環境もしっかりと動き出している。


私は遼と共にすぐにホテルを出たけれど、遼のお父さんと私のお父さんは、あの後、ふたりだけで食事をしたらしい。

ふたりとも終始無言だったようだけど、言葉は無くてもきっと同じことを考えていたのだろうなと思っている。

昔、亡くなった私のお母さんと遼のお父さんは、お互いに思い寄せ合っていた。

けど、お母さんはお父さんと結婚することになり、遼のお父さんは身を引いたのだ。

母は遼のお父さんへの気持ちを断ち切ることが出来なかった。

そして父も、いつまでも遼のお父さんのことを思い続けている母に歯がゆさを感じ、自分だけが母を想っていることが悔しかったんだ。

そんな中、母は病気で亡くなり、父はすぐに後妻を娶った。

その父の行動が、遼のお父さんは許せなく、もともとこじれていた関係をさらに悪化させることとなってしまった。


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