Maybe LOVE【完】

―――ピピピ♪
バッグの中の車のキーを探してると携帯が鳴る。
電話か、そう思って画面も見ずにキーを探す手は止めずに電話に出た。

「はい?」
《動くなっつっただろ》

―――あの男か。
電話に出たことを後悔した。

「待つって返事してませんから」
《俺を送れって言っただろ》
「だからって待つわけないでしょ」

バッグに入れたはずのキーが見つからなくてイライラするのと、この電話の主にイライラするのと重なって、異常な苛立ちが募る。

「《酒飲んでるくせに》」

左側に当ててた携帯からと、右耳から聞こえた声が重なって、声のする方へ顔を向ける。

「なんでアンタが持ってんのよ・・・」

私の車のキーを人差し指に通してクルクルと回して、意地悪く笑ってる。
携帯はすでに切られていて、電子音だけが響く。

「俺が前もって抜いてあるに決まってるだろ。お前の考えそうなことだからな」

そう言って勝手に車を開けて、しかも、運転席に乗り込んで、エンジンまでかけてしまう。

「早く乗れ」

早く乗れって、この車は私のなんだけど?!と思いながらも、置いていかれるのは嫌だから、自分の車だけど渋々乗り込んだ。

走り出した車はどこへ向かってるんだろうか。
助手席に座る私にはハンドル操作が出来ないから、どうしようもないけど。

「・・・ちょっと」

どんどん走り進める車は私の知ってる道だけど、標識はありえない方向へ向かってる。

「私の家は逆だけど?」
「誰がお前を送るっつったよ。俺を送れっつったんだぞ」
「じゃあ、どこに向かうのよ?!」

うるさい、と言われて、デッキに入ってたCDを勝手に入れられて音楽が流れる。
悪くないな、と微笑んでたけど、そんなことはどうだっていい。
どうせハンドルは持てないし、運転を代ってもらえそうにもない。諦めて座席に深く座り込んだ。

流れる景色は私の知らない場所。
さっきの大通りまでは知っていたけれど、ここまで来てしまったら道がわからない。
もうどこへ連れて行かれても驚かない、そう思って完全に諦めて目を閉じた。

出会いを求めて参加したわけじゃない。“飲み会”だって誘ってくれたから参加しただけ。
男の人がいないわけないとなんとなく思っていたけど、そうだったらいつも通り軽く話して、少し食事代出して帰ろうって思ってた。
なのに、今は名前も知らない男に車を乗っ取られて知らない街に向かってる。

この人がどういうつもりで私に声をかけたのかはわからないけど、行き先がラブホじゃなければどこでもいい。
この人の家も嫌だな、そう思いながら車の揺れで少し気が抜けて眠ってしまった。
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