難攻不落な彼に口説かれたら
「古賀さんの代理だし、そこは終始笑顔でいたよ。まだアルコール抜けてないし、酒臭い気がする」

仁にはやはり苦行だったようだ。

いくら飲み会が嫌でももう大人だし、仏頂面ではいられないよね。

「そう?」

顔を近づけクンと仁の匂いをかごうとしたら、カブッと彼に鼻を噛まれた。

「ぎゃあ‼︎」

痛くはなかったけど、仁の突然の奇行に驚いて目をパチクリさせると、彼に軽くツンと頭を突かれた。

「な、何?」

仁は、ダメな子を見るような目で私を見ている。

「雪乃は無防備過ぎ。今みたいな手で男は突然手を出すよ。それ、俺以外の人間にはやらないでね」

仁に言われて、「あっ」と間抜けな声を上げる。

「身に覚えあるんだ?」

仁の追及に顔が強張る。

「……秀兄とか小野寺君にね。でも、ふたりなら大丈夫だよ」
< 169 / 294 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop