難攻不落な彼に口説かれたら
あえてどういう関係かは言わずに、クスリと笑みを浮かべながらそう告げると、古賀さんは『へえ』と興味深かそうに相槌を打った。

その眼光は鋭く、俺を値踏みしているかのよう。

『今日は、彼女体調悪そうでしたが……』

中村さんの身体の具合が気になって古賀さんに聞いてみる。

『うちの娘のインフルエンザが移って、先週ずっと会社を休んでたんだ』

『子供から移されるとかなりウィルスも強そうですよね』

『雪乃は熱があっても頑張っちゃうからなあ。俺が休めって言っても聞かないんだ』

『結構頑固ですからね。それは、わかります』

昔、一緒に生徒会の仕事をしていた時も、今にも倒れそうな顔で会計報告書を作っててギョッとしたものだ。

わざとその報告書を酷評して作業をやめさせたが、俺がそうしなかったら彼女は倒れていただろう。
< 64 / 294 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop