難攻不落な彼に口説かれたら
優しく声をかけても中村さんは「大丈夫」って言い張って無理をする。

今日もそんな彼女の顔色が気になった。

日中息つく間もなく働いていた中村さん。

俺が赴任してきたこともあり、俺関係の諸手続きにかなり時間がかかっていたようだった。

通常業務もあるだろうし、ひょっとして残業してるんじゃないだろうか?

自分の存在が彼女に負担をかけていると思うと、気にせずにはいられない。

中村さんがオフィスでひとり倒れている姿が脳裏に浮かぶ。

会社に戻って確認しなければ落ち着かない。

腕時計に目をやれば、午後八時四十分を回っている。

『古賀さん、すみません。明日の経営会議の資料が気になるので社に戻ります。あと頼みます』
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