例えば君に恋しても



どれだけ考えても理解できないこともある。

彼の少し後ろを歩いて暫くすると

突然、仁がしゃがみこむ。

「どうしたの?」

「疲れた」

「まだ30分くらいしか歩いてないけど?

何処に行くつもりなの?」


彼の背後に立ち止まると、いつもは見下ろしてくる仁が私を見上げた。

「水族館」

水族館?

失礼だけど意外だ。


「車でも1時間はかかるよ。歩いていくのは無理だよ」

「でも車は嫌なんだろ?」

「・・・普通の車なら・・・いいよ。」

私だってそんな距離なら歩くなんて御免だ。

すると、直ぐに携帯を取り出して車を呼ぶ。

前に一度だけ会ったことがあるあの秘書にでもお願いしたのだろうか。

「仁のくせに気を使ってくれたの?」

「俺のくせにってどういう意味?」

「別に・・・」


近くの目印になるビルの前。

仁はビルの前の表階段に腰を下ろして貧乏ゆすりが止まらない様子だ。

不機嫌な時だけは分りやすい人だ。


「もう少し落ち着けば?」

「もう5分は待ってる」

「短気は損気だよ。」

「本当、小言がうるさい。」

「それが私らしいんでしょ?」

その言葉でピタリと貧乏ゆすりを止めると、不貞腐れた顔で横地立つ私を見ていた見上げる。

「嫌なら遠回しじゃなく、ハッキリ止めてって言えば?」

「言ったら直ぐに仁は怒るでしょ?」

「・・・怒らないよ。たぶんね。」


そんな風に私の意見を聞こうとする態度も策略の一つだろう。


心底私の意見を聞く気がないから反発したり素直になってみたり、浮き沈みが激しくなるんだろうね。

それが爆発した時が恐ろしい。






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